はじめに:ピンチをチャンスに変えるために
この記事は、Webサイトのリニューアルプロジェクトを終えたものの、期待していたような成果が出ず、どうすればいいのか悩んでいるWeb担当者のあなたに向けて書きました。
会社にとってWebサイトのリニューアルは、数年に一度の一大イベントです。それだけに、もし成果が出ない(失敗した)となると、担当者としては「責任を問われるのではないか」と不安になってしまいますよね。でも、安心してください。
リヌーボデザインが大切にしている「再生・刷新」という考え方を取り入れれば、今のその「失敗」は、本当の成功をつかむために必要な「学習のプロセス」へと変えることができるのです。
この記事では、まず「なぜリニューアルしたのに成果が出ないのか」という根本的な原因を一緒に紐解いていきます。
そして、リヌーボデザイン独自の4つの再生プロセス(Re:Think、Re:Design、Re:Build、Re:Value)を使って、今ある「もったいないサイト」を、しっかりと成果が出せる「働くサイト」へと生まれ変わらせる方法をお伝えします。
そして何より重要なのが、この状況をどうやって上司や経営層に伝えるか、ですよね?「せっかくお金と時間をかけたのに」「社内の多くの人の協力を得たのに」という過去へのこだわりを解きほぐし、「今ここで改善すれば、これだけの利益になります」という未来の話(機会損失の回避)に目を向けてもらうための、具体的な話し方やロジックもたっぷり用意しました。
この記事を読み終わる頃には、あなたは「失敗を謝る人」から、「会社の資産を守り、育てる提案ができる人」へと変わっているはずです。さあ、一緒に解決への一歩を踏み出しましょう。
第1章:リニューアル後の「静寂」——なぜWeb担当者は苦しいのか
1.「きれいになった」けれど「働かない」サイトの現実
Webサイトのリニューアルは、単にデザインを変えるだけではありません。会社のブランドイメージを一新したり、営業活動を助けたり、何より売上や問い合わせといった「数字」を作ることが期待されている、とても重要な投資ですよね。
プロジェクトの間、あなたは社内のいろんな意見をまとめたり、制作会社さんと何度も打ち合わせをしたり、膨大なページ内容の引っ越し作業に追われたりと、本当に大変だったと思います。
サイトが公開された日は、まるで長いマラソンを走りきったような達成感があったのではないでしょうか。
ところが、多くの担当者さんを待っているのは、公開翌日から始まる「静寂」という名の厳しい現実なんです。
アクセス解析の画面を見ても、期待していたような右肩上がりのグラフにはならず、むしろ前のサイトの時よりも訪問者が減ってしまっていたり、すぐに帰ってしまう人(直帰率)が増えていたり……。
問い合わせフォームからのメールも届かず、社長や上司が期待していた「リニューアル効果」が、なかなか数字として現れてくれません。
社内の人たちからは「デザインがきれいになったね」「スマホで見やすくなったよ」と褒めてもらえるものの、担当者であるあなたの心の中では、「でも、ビジネスとしては機能していない……」という焦りが、日に日に大きくなっているのではないでしょうか。
実は、この悩みを持っているのはあなただけではありません。ある調査によると、Webサイトリニューアルの結果に心から満足している企業はわずか18%程度しかなく、残りの約8割は何かしらの不満や失敗を感じているそうです。
つまり、「Webサイトが働いてくれない」という現象は、そもそも、あなたの能力が足りないからではなく、Web業界全体によくある「構造的な問題」である可能性が高いのです。
2.失敗を「直視」するのが怖い心理
成果が出ていないことが薄々わかっていても、それを認めるのはとても勇気がいりますよね。「失敗を認めることへの恐怖」が、Web担当者を一番苦しめている原因かもしれません。
数百万円、時には一千万円超という安くない予算を使い、3か月〜半年以上もかけて作ったものが「失敗だった」と認めるのは、自分の頑張りや、決裁してくれた上司の判断を否定することのように感じてしまうからです。
この葛藤は、いくつかの心理的なバイアス(思い込み)によって、さらに複雑になってしまいます。
- 「まだ大丈夫」と思いたい(確証バイアス)
人間は、自分にとって都合の良い情報を集めたがる生き物です。「まだ公開したばかりでGoogleに見つかっていないだけだ」「今は時期的にアクセスが少ないだけだ」といった理由を探して、全体の数字が悪いことから目を逸らそうとしてしまいます。たまたま1件問い合わせが来ると「ほら、兆しは見えている!」と自分を納得させてしまうこともあります。 - 「もったいない」の呪縛(サンクコスト効果)
「あれだけのお金と労力をかけたんだから、このサイトは成功しているはずだ(成功していなければならない)」という心理が働きます。今のやり方を否定して修正することは、過去の投資を無駄にするように感じられ、「もう少し様子を見よう」と判断を先延ばしにしてしまいます。これは、損失が大きくなると分かっていても止められない、ギャンブルのような心理状態です。 - 上司への気遣いと「沈黙」
リニューアルを承認した上司もまた、「自分の決断は正しかった」と信じたい当事者の一人です。その空気を読んで、「順調です」「様子を見ています」と曖昧な報告をしてしまっていませんか? 特に失敗を許さない雰囲気の会社だと、悪い報告をすることは自分の立場を危うくすることだと感じてしまい、事態が深刻になるまで「沈黙」を選んでしまいがちです。
3.Webリニューアル失敗の「構造的な原因」
そもそも、なぜ多くのWebリニューアルは失敗してしまうのでしょうか?
リヌーボデザインでは、その原因は個々の制作会社の技術力やデザインセンスではなく、プロジェクトの進め方そのものにある「構造的な欠陥」だと考えています。
「作っては壊す(スクラップ&ビルド)」の弊害
日本のWeb業界では、3年から5年経つとサイトを全部作り直す「フルリニューアル」が一般的です。でもこれ、実は積み上げてきた資産を自ら壊しているようなものなんです。
Webサイトの価値は、長く運営することで検索エンジンから得た信頼(ドメインパワー)や、他サイトからのリンク、蓄積されたコンテンツによって支えられています。
フルリニューアルでURLが変わってしまったり、過去の記事を「古いから」と削除してしまうことで、これらの資産が消えてしまいます。これが、リニューアル後にアクセスが激減する「SEOの失敗」の正体です。
「デザイン=成果」という誤解
多くの制作会社は「納品すること」がゴールになっていて、「きれいなデザイン」を作るのは得意でも、「売れる仕組み」を作るマーケティングの知識が足りないことがあります。
発注する側も「かっこいいサイトにしたい」という要望を出しがちで、その結果「デザインは素敵だけど、商品やサービスの魅力が伝わらない」という困った状態になります。
ユーザーの心に響くメッセージよりも、見た目のトレンドが優先されてしまい、「見た目が良いだけのサイトになってしまうのです。
一発勝負(ウォーターフォール型)の限界
従来のWebリニューアルは、最初にすべてを決めてから公開までを一気に進める「ウォーターフォール型」で行われることが多いです。
でも、これだと公開するまでユーザーの本当の反応が分かりません。もし最初の仮説が間違っていたら、修正するのにまた大きなお金がかかります。
現代のWebマーケティングでは、市場やユーザーの気持ちは常に変化しているので、一度の計画ですべてを完璧に当てるのは不可能です。
「完成品」を目指して長期間かけるやり方自体が、失敗のリスクを高めているのです。
Web担当者のあなたがまず理解してほしいのは、サイトが成果を出していないのは、あなたが無能だからではないということです。
「ビジネスの目的」「ユーザーの心理」「資産の継承」という大事な視点が、業界の「当たり前」によって見過ごされていたことが原因なのです。
このことを理解すれば、上司への報告も「すみません」という謝罪から、「ここを直せばよくなります」という前向きな提案に変えることができます。
第2章:失敗を「改善のステップ」と捉え直すための論理
上司に現状を報告し、改善策を認めてもらうためには、感情論ではなく、経営層が納得する「ビジネスの論理」で話す必要があります。
ここでは、リヌーボデザインの哲学とビジネスの考え方を組み合わせて、報告のための説得力あるロジックを作っていきましょう。
1.「失敗」ではなく「データ収集」なんです
まず、言葉の定義を変えることから始めましょう。
成果が出ていない今の状況は「失敗」ではありません。これは「仮説を検証した結果」であり、改善するために必要な「データを集めていた期間」だと位置づけるのです。
Webサイト運営において、最初から100点満点を取るのは不可能です。あのAmazonやGoogleでさえ、毎日たくさんのテストをして、失敗の中から正解を見つけ出しています。
リヌーボデザインがお勧めする「グロース・ドリブン・デザイン」という考え方では、サイトの公開はゴールではなく、これから育てていくための「スタート地点」に過ぎません。
上司への説明ロジック:
「今回のリニューアル公開によって、これまで見えていなかった『お客様がどこで迷っているか』『何に反応しないか』が、はっきりとしたデータとして見えてきました。これは机上の空論ではない、すごく貴重な改善のヒントです。このデータをもとに微調整を行えば、確実に成果を伸ばしていくことができます。」
2.サンクコスト(過去)と機会費用(未来)の天秤
もし上司が「せっかく高いお金を払って作ったんだから、もう少し様子を見ようよ」と言ったら、それは典型的な「サンクコストの呪縛」にかかっています。これに対抗する最強の武器は、「機会費用」という考え方です。
機会費用とは、「ある選択をしなかったことで失われる利益」のことです。成果の出ないサイトをそのままにしておくことは、現状維持ではなく、「本当なら得られるはずだった問い合わせや売上を、毎日捨て続けている」のと同じことなんです。
比較表:サンクコスト vs 機会費用
| 視点 | 考え方のクセ | 経営への影響 |
| サンクコスト(埋没費用) | 「1000万円かけたのだからもったいない」 | 過去の出費に縛られて損切りができず、傷口を広げてしまう(赤字の垂れ流し)。 |
| 機会費用(機会損失) | 「放置すれば月間100万円の利益を失う」 | 未来の失われる利益に目を向け、早めに追加投資して黒字化を目指す。 |
上司への説明ロジック:
「部長、今のサイトのまま半年間様子を見た場合、現在のコンバージョン率から計算すると、月間で約〇〇件、金額にして約〇〇万円分の問い合わせチャンスを逃し続けることになります。これは、リニューアル費用の回収が遅れるだけでなく、ライバル会社にお客様を取られてしまうリスクを放置することになります。過去の費用を取り戻すためにも、今ここで『再生プロセス』に着手して、機会損失を食い止める判断が必要です。」
3.「もったいない」精神による資産管理
リヌーボデザインが一番伝えたいメッセージは「もったいない」です。これは単なる節約の話ではなく、Webサイトを「使い捨ての商品」ではなく、会社の大切な「資産」として捉える、高度な戦略です。
たとえ今、成果が出ていなくても、そのサイトには使える資産がたくさん眠っています。
- ドメイン資産
長く使ってきたURLの信頼性。 - コンテンツ資産
今回新たに作った商品ページや事例紹介ページ、ブログ記事など(過去から引き継いできたページも含む)。 - デザイン資産
かっこよいデザイン、おしゃれなデザイン、きれいに撮った写真、最新のWebシステム。(WordPressなどのCMS、HTML/CSSのプログラム) - トラフィック資産
現在のWebサイトに来てくれているお客様の流れ。
これらを「失敗作だから」といって全部捨てて作り直したり、このまま放置したりするのは、会社の資産をドブに捨てたり、有効に使えずに無駄にしてしまうことになるのです。
この状況で必要になるのは、価値を引き出し、価値を最大にするための「リノベーション(再生)」なのです。
上司への説明ロジック:
「成果が出ていないからといって、全てをゼロから作り直すのはあまりにも『もったいない』です。家の基礎や柱(システムやドメイン)、内装の装飾(デザイン)は活かしつつ、生活動線(情報の伝え方や使い勝手、お問い合わせへの導線)だけをリフォームする『再生』のアプローチなら、コストを抑えながら、最短で成果が出る『働くサイト』に変えることができます。」
第3章:なぜ成果が出ないのか? 4つの再生プロセスで診断
上司を説得するためには、精神論ではなく、「なぜダメだったのか」を具体的かつ技術的に説明して、解決策がはっきりしていることを示す必要があります。
ここで役に立つのが、リヌーボデザインのフレームワークである「Re:Think」「Re:Design」「Re:Build」「Re:Value」の4つのWeb再生プロセスです。
この4つの視点を使ってサイトを診断することで、漠然とした「失敗」を、解決可能な「タスク」へと分解することができます。
1.Re:Think(再定義):目的と戦略の不一致
成果が出ない根本的な原因の多くは、デザイン以前の「目的設定」にあります。
症状
- アクセスはあるけれど、問い合わせにつながらない。
- 問い合わせはあるけれど、受注につながらない「冷やかし」ばかり。
- 社内のあちこちから「あれも載せて」と言われ、何が言いたいのか分からないサイトになっている。
原因
- 目的の迷子
「リニューアルすること」自体がゴールになっていて、「誰に」「どうしてほしいか」というビジネスの目的が曖昧でした。 - ターゲット不在
「すべての人」に向けた結果、誰の心にも響かないメッセージになっています。
再生アプローチ
もう一度、ビジネスの目的を再定義(Re:Think)します。
「誰の、どんな悩みを解決するサイトなのか」を言葉にして、目指すべき数字(KPI)を決め直しましょう。
2.Re:Design(再設計):心理と行動のズレ
「きれいなサイト」が「売れるサイト」とは限りません。ユーザーの使い心地(UX)が置き去りにされていませんか?
症状
- トップページを見てすぐに帰ってしまう(直帰率が高い)。
- 見てほしいページ(料金表や事例)までたどり着いてくれない。
- スマホでボタンが押しにくい、文字が読みづらい。
原因
- 自己満足のデザイン
企業が「伝えたいこと」ばかり優先して、ユーザーが「知りたいこと」が見つからない構造になっています。 - 導線設計のミス
お問い合わせボタンが見つけにくい場所にあったり、「送信」としか書かれていなくて押すのが怖かったりします。
再生アプローチ
ユーザーの心理に合わせて、ボタンの配置や色、言葉選びを再設計(Re:Design)し、迷わずスムーズに行動できる道筋を作ります。
3.Re:Build(再構築):技術的なミスと資産の喪失
一番怖くて、専門知識がないと気づきにくいのが「技術的な失敗」です。
症状
- リニューアルした途端、検索順位がガクンと落ちた(圏外に飛ばされた)。
- ページの表示がすごく遅い。
- Googleの管理画面(Search Console)でエラーがたくさん出ている。
原因
- リダイレクトの失敗
前のサイトの評価を新しいサイトに引き継ぐ設定(301リダイレクト)が正しくできておらず、過去の資産がリセットされてしまいました。 - 重たいサイト
きれいな画像や動画を使いすぎて、ページの読み込みが遅くなり、ユーザーもGoogleも嫌がっています。
再生アプローチ
ウェブサイトの裏側の工事を行います。適切な転送設定をやり直したり、表示速度を上げることで、検索エンジンからの評価を取り戻す再構築(Re:Build)を行います。
4.Re:Value(再価値化):中身が空っぽ
器(システム)は立派だけど、中身(コンテンツ)に魅力がない状態です。
症状
- 訪問者の滞在時間が極端に短い。
- ブログやニュースが全然更新されていない、内容が薄い。
- 競合他社と比べて、情報量や専門性で負けている。魅力が伝わっていない。
原因
- コンテンツ不足
制作作業に追われて、中身を作りこむ時間がありませんでした。「コンテンツ量・文字数が少ないページ」「画像ばかりのページ」「準備中」のページはありませんか? - 質の低下
かっこいいサイト、おしゃれなサイトにするために文章量を減らしてしまいました。古くなったページや過去のブログ記事を削除してしまい、検索からの流入を失ってしまいました。
再生アプローチ
今あるコンテンツを磨き直します。過去の記事をリライトして最新情報にし、ユーザーの疑問に答える質の高い記事を追加します。
サイトを単なるカタログから、顧客にとって役立つ情報源へと再価値化(Re:Value)します。
第4章:上司を説得するための報告シナリオと会話スクリプト
分析ができたら、次はいよいよ上司に報告して、改善のアクションを認めてもらいます。
ここでは、上司のタイプや性格に合わせた報告の作戦と、そのまま使える会話の台本を用意しました。
1.報告の基本ステップ:現状-原因-転換-承認
悪いニュースを前向きな提案に変えるには、この4つのステップで話すとスムーズです。
- 現状
事実(データ)を冷静に伝えます。言い訳はしません。 - 原因
目標と現実のズレの原因を、構造的な視点(4つのRe:)で説明します。 - 転換
「失敗」を「改善のチャンス」と言い換え、再生プロセスへの移行を提案します。 - 承認
具体的なアクション(再生のための改修)の許可をもらいます。
2.シナリオA:【数字・コストに厳しい上司】への報告
- 上司の特徴
「費用対効果はどうなってる?」「これ以上金は出せないぞ」 - 攻略ポイント
過去のお金(制作費・リニューアル費用)には触れず、「損をしないため」「安く済ませるため」という点を強調します。
会話スクリプト例:
部長、リニューアル後のサイトの状況について、数字をもとにご報告があります。
正直に申し上げますと、現在の問い合わせ数は目標の60%ほどで、費用の回収が少し遅れている状況です。詳しく分析したところ、原因はデザインそのものではなく、検索エンジンからの評価を引き継ぐ『技術設定』と、お客様を問い合わせへ導く『導線』の2点に詰まりがあることが分かりました。
今のまま放置してしまうと、サイトの構造的な問題により、年間で約〇〇万円分の見込み顧客を逃し続けてしまう計算になります。そこでご提案なのですが、サイトを一から作り直すのではなく、今のデザインやシステム、コンテンツ資産は最大限に活かして、問題のある部分だけを外科手術的に直す『Webサイト再生(リノベーション)』を行いたいと考えています。
これなら、作り直すより遥かに少ない追加投資で、3ヶ月後には目標値への回復、半年後には120%達成を目指せます。専門的な知見を入れるため、Webサイトの再生や改善に強い専門家の診断を受けて、具体的な改修プランと費用対効果の試算を提出させてもらえないでしょうか?
3.シナリオB:【感覚・ブランドイメージ重視の上司】への報告
- 上司の特徴
「なんかイメージと違うんだよな」「もっとカッコよくできないの?」 - 攻略ポイント
デザインの好みの話は避けて、ユーザー視点(UX)とブランド価値の話に持ち込みます。
会話スクリプト例:
本部長、新しいサイトのデザインについて、社内外からの評判やデータを整理しました。
見た目の美しさはとても評価されていますが、実際のビジネス成果としては、まだポテンシャルを出し切れていないようです。分析の結果、私たちが『カッコいい』と思うデザインと、お客様が『使いやすい』と感じるデザインに少しズレがあるかもしれません。具体的には、お客様が一番知りたい情報へのボタンがお洒落すぎて気づかれにくく、そこで帰ってしまっているようです。
せっかく作り上げた今の世界観やブランドイメージを崩すのはもったいないです。
そこで、今のデザインの良さはそのまま活かしつつ、お客様の心理に合わせてボタンの配置や情報の見せ方だけを微調整する『Re:Design(再設計)』を行いたいと思います。家で例えるなら、外観や内装はそのままで、暮らしやすいように家具の配置や動線を変えるようなものです。これで、ブランドイメージを守りながら、しっかりと『働くサイト』に進化させることができます。
ユーザービリティの専門家を入れて、一度『お客様視点』での診断を行い、ブランド価値を損なわずに成果を上げるための調整案を作らせてください。
4.シナリオC:【責任追及を恐れる・保守的な上司】への報告
- 上司の特徴
「失敗したら俺の責任になる」「波風立てたくない」 - 攻略ポイント
これは「修正」ではなく、最初から予定していた「成長フェーズ(第2段階)」なんだ、という枠組みで話します。
会話スクリプト例:
課長、リニューアルプロジェクトの『フェーズ1(公開)』が無事完了し、運用が安定してきました。現在は、実際のユーザーデータが集まり始めた『フェーズ2(最適化・グロース)』の段階に入っています。
集まったデータを分析すると、想定以上に改善できる『宝の山』が見つかりました。ここを微調整することで、さらに成果を伸ばせることが確実です。逆に言うと、今ここで調整を止めてしまうと、せっかく集まったデータが無駄になり、プロジェクトが中途半端な状態で終わってしまいます。
今回のリニューアルを社内的に『成功』として完結させるためには、この『Re:Value(再価値化)』の工程が不可欠です。これは、現代のWeb運用における標準的な成長のためのプロセスなんです。
次回の経営会議でも『公開後のデータに基づいてPDCAを回し、資産価値を高めるフェーズに入った』と前向きに報告できるよう、Web再生の専門家やコンサルタントのサポートを導入し、確実な成果を作りにいきませんか?私が責任を持って進行管理を行います。
おわりに:「もったいない」を「価値」に変える決断
Webサイトのリニューアルで成果が出ないというのは、担当者にとっては本当に孤独で辛い試練だと思います。でも、そこには必ず「原因」があり、そして「解決策」があります。
現状を悲観して、報告を怖がり、黙ったままにしておけば、サイトは本当に「死んだ資産」になり、会社にとってのお荷物になってしまいます。
でも、あなたが勇気を持って「これは改善のステップなんです」と声を上げ、「Re:Think → Re:Design → Re:Build → Re:Value」という再生の地図を示すことができれば、そのサイトは必ず蘇ります。
失敗から学び、それを糧に成長することこそが、ビジネスにおける本当の成功です。
さあ、その手に握られたデータを武器に、自信を持って上司のデスクに向かいましょう。「失敗」を「成功へのプロセス」に変えるためのロジックは、もうあなたの手の中にあります。
御社のWebサイトの再生を応援しています。
付録:上司報告前チェックリスト
上司に報告へ行く前に、このリストをチェックしてみてください。
- [ ] 数字の準備はOK?:
PV数やコンバージョン率などの推移を、グラフで見せられますか? - [ ] ライバルと比較した?
競合他社のサイトと比べて、自社のどこが弱いか(表示速度や情報量など)を客観的に言えますか? - [ ] 「損」を計算した?
このまま放置した場合、年間でいくらの損失になるか、ざっくりとした金額を出せますか?(機会損失の試算) - [ ] 原因の仮説はある?
4つのプロセス(Re:Think, Re:Design, Re:Build, Re:Value)のうち、どこに詰まりがあるか、当たりをつけられていますか? - [ ] お得感を言える?
再度フルリニューアルするよりも、「再生」の方がどれくらい安く済むか(例:1/3〜1/5の費用)を説明できますか? - [ ] 心の準備はOK?
自分の感情(辛い、申し訳ない)を一旦横に置いて、ビジネスの課題として冷静に話す準備はできていますか?

