はじめに:そのWebサイト、「もったいない」ことになっていませんか?
「修正を頼んでも返事が来ない」「毎月費用を払っているのに提案がない」「リニューアルしたのにお問い合わせが増えない」……そんな制作会社への不満や悩みを抱えたまま、本来のパフォーマンスを発揮できていない「機能不全」の状態に陥っているサイトが驚くほど多いです。
現場のWeb担当者様からは、悲痛な声が聞こえてきます。
「もう、今の制作会社とは付き合えない。早く変えたい。」
そう思うのは、決してあなたのわがままではありません。これはWeb制作業界が抱える構造的な課題と、発注者側との情報のギャップ(情報の非対称性)が原因であることがほとんどだからです。
でも、ちょっと待ってください。
現状を打破するために、「制作会社を変えて、とりあえずWebサイトを作り直そう(リニューアルしよう)」と考えてはいませんか?
実は、準備不足のままのリニューアルや、感情任せの業者変更は、新たなリスクを招き、過去の大切な資産を捨ててしまう「もったいない」結果になりかねません。
この記事では、現状にモヤモヤを抱えるWeb担当者様に向けて、安易なリニューアルや業者変更に踏み切る前に知っておくべき「業界の裏側」や「失敗しない判断基準」、そして第三者の専門家による「セカンドオピニオン」の大切さを、たっぷりと解説します。
さらに、私たちリヌーボデザイン(Renoovo Design)が提案する、サイトを壊さずに活かす「Re:Think」「Re:Design」「Re:Build」「Re:Value」という4つの再生プロセスについてもご紹介します。
あなたが会社の資産を守り、自信を持って正しい決断をするための「実務ガイド」として、ぜひ最後までお読みください。
第1章 Web担当者さんの孤独な闘い:なぜ「制作会社を変えたい」と思うのか?
なぜ多くのWeb担当者さんが、制作会社を変えたいと願うようになるのでしょうか?
表面的な不満の裏側には、業界特有の事情や契約の落とし穴が潜んでいます。ここでは、担当者さんが直面しがちな「5つの苦悩」と、その背景にある理由を深掘りしてみましょう。
1.「連絡が来ない」ストレス:信頼が崩れる瞬間
制作会社を変えたい理由のアンケートをとると、不動の1位は常に「レスポンスが遅い・連絡がつかない」ことです。
担当者さんが感じる「無視されている?」という不安
Web担当者さんにとって、サイトの修正依頼やトラブル報告に対する反応が遅いのは、本当に胃が痛くなるようなストレスですよね。
例えば、キャンペーン情報の掲載が1日遅れたらチャンスを逃してしまいますし、システムエラーが放置されれば会社の信用に関わります。「急いでいます!」と伝えても、「確認します」の一言だけで数日放置……。電話をしても担当者が捕まらない。
社内で上司から「あの件、どうなった?」と聞かれ、「制作会社から返事がなくて……」としか答えられない無力感。それが積み重なると、やがて不信感は敵対心へと変わってしまいます。
制作会社側の事情:オーバーワークの構造
なぜ、制作会社はそんなにレスポンスが遅いのでしょうか?
実は、多くの中小規模の制作会社や格安を売りにする業者では、一人のディレクターが数十社もの案件を同時に抱える「多重請負」の状態になっています。
悲しい現実ですが、毎月の保守費用(数千円〜数万円程度)しか支払わない既存のお客様の優先順位は、どうしても低くなりがちです。
新規の納品前の案件や、高額な改修案件が動いているクライアントへの対応で手一杯になり、軽微な修正依頼は後回しにされてしまう……そんな力学が働いているのです。
これは担当者個人の資質というより、業界のビジネスモデルの限界とも言えるでしょう。
2.「提案がない」保守契約:毎月何にお金を払っているの?
「毎月保守費用を払っているのに、何もしてくれない」「請求書を送ってくるだけで、改善の提案が一切ない」という不満も、本当によく耳にします。
「維持」と「運用」の大きなズレ
多くのWeb担当者さんは、保守契約の中に「サイトを良くするための提案」が含まれていると期待しています。
しかし、制作会社側が定義する「保守」は、多くの場合「サーバーの維持管理」や「ドメインの更新代行」、あるいは「CMSが動いているかの監視」といった、いわゆるインフラの維持(メンテナンス)に限定されています。
ここに大きな認識のズレがあります。制作会社からすれば「サイトが落ちていないのだから義務は果たしている」という認識ですが、担当者さんからすれば「アクセス数も伸びないのに、ただお金を取られている」と感じてしまうのです。
そもそも「提案できる人」がいない問題
さらに深刻なのは、制作会社側にそもそも「マーケティング提案をする能力」がないケースです。
デザインやコーディング(構築)に特化した制作会社の場合、Googleアナリティクスのデータを読み解いたり、SEO(検索エンジン最適化)のトレンドに基づいたコンテンツ提案を行ったりする専門家が社内にいないことも珍しくありません。
その結果、「どうすればもっと集客できますか?」と相談しても、「デザインを新しくしましょう」といった的外れな回答しか返ってこないことになります。
3.ブラックボックス化されたコストと技術
Web制作の費用感って、本当に分かりにくいですよね。
「一式」見積もりのモヤモヤ
ちょっとした修正を依頼しただけなのに、「作業費一式 5万円」といったざっくりした見積もりが出てきたことはありませんか?
「テキストを数行変えるだけで、なんで5万円もするの?」と疑問に思っても、「エンジニアの工数が……」「検証環境でのテストが必要で……」なんて専門用語で説明されると、それ以上突っ込めなくなってしまいます。
その価格が適正なのか、それとも足元を見られているのか判断できない。この「納得感のなさ」が、関係を冷え込ませていきます。
「独自システム」という名の人質
他社への乗り換えを検討し始めた担当者さんを絶望させるのが、「独自CMS」や「複雑なカスタマイズ」によるロックイン(囲い込み)です。
「このサイトは当社の独自システムで動いているので、他社さんは触れませんよ」「移管するならゼロから作り直しになります」と言われた経験はありませんか?
これは顧客を繋ぎ止めるための手法ですが、現代のオープンなWebの考え方からは逆行しています。
担当者さんはまるで人質を取られたような気分になり、不満があっても現状維持を強いられてしまうのです。
4.技術が古くて「できない」と言われる
Webの世界は日進月歩です。数年前に作ったサイトが、今の環境についていけなくなることもあります。
「仕様です」で片付けられるストレス
「スマホでもっと見やすくしたい」「予約システムを入れたい」と要望を出しても、「現在のシステムでは対応できません」と断られることがあります。
本当に技術的に無理な場合もありますが、単にその制作会社の技術力が低い、あるいは面倒だから断っているケースも多々あります。
他社のサイトを見て「なんでウチはこれができないんだろう」と歯痒い思いをしている担当者さんは少なくありません。
放置されるセキュリティリスク
WordPressなどのCMSは定期的なアップデートが必要ですが、制作会社がメンテナンスを怠っていると、サイトの改ざんや情報漏洩のリスクが高まります。
ニュースでセキュリティ事故を見て不安になり相談しても、「ウチは大丈夫です」という根拠のない返事しか返ってこない……これでは夜も眠れませんよね。
5.担当者さんの孤独:社内に相談相手がいない
多くの中小企業では、Web担当者は「兼任」であり、社内に詳しく相談できる上司や同僚がいません。
「Webのことは君に任せた」と言われながら予算は限られ、成果へのプレッシャーだけがかかる。制作会社の専門用語に気圧され、言いくるめられているのではないかという疑念を持ちながらも、反論できる知識がない。
この「孤独感」こそが、制作会社を変えたいという想いの根底にある最大の要因かもしれません。
第2章 リニューアルの罠:なぜ「作り直し」は失敗しやすいのか?
現状の不満を解消するために、多くの担当者さんが最初に思いつく解決策が「全面リニューアル」です。制作会社も「今のサイトは古いので作り直しましょう」と提案してきます。
しかし、あるデータによれば、Webサイトリニューアルの約75%が失敗に終わるとも言われています。
なぜ、多額のコストをかけたリニューアルが、さらなる悲劇を生んでしまうのでしょうか。
1.「スクラップ&ビルド」の危険性
日本の住宅事情と同じように、Web業界にも「古くなったら壊して新しく作る」というスクラップ&ビルドの文化が根付いています。
しかし、Webサイトにおいてこれは極めて危険な考え方です。
目に見えない「資産」を捨ててしまう
長年運用してきたWebサイトには、目に見えない資産がたくさん蓄積されています。Googleなどの検索エンジンからの評価(ドメインパワー)、他サイトからのリンク、過去のコンテンツが獲得している検索順位などです。
安易なリニューアルでURLを変えてしまったり、過去の記事を削除してしまったりすると、これらの資産が一瞬にしてゼロになります。「リニューアルしたら検索順位が圏外に飛んだ」「アクセスが半減した」という失敗事例は後を絶ちません。
ユーザーを迷子にさせてしまう
「使いやすく刷新しました!」というリニューアルが、既存のユーザーにとっては「使い慣れた機能がどこに行ったかわからない」という改悪になることがあります。
AmazonやYahoo!がデザインを大きく変えないのは、ユーザーの学習コストを考慮しているからです。
見た目だけをおしゃれにしても、使い勝手(ユーザビリティ)が悪くなれば、問い合わせや購入といったコンバージョン率は下がってしまいます。
2.制作会社の「ポジショントーク」を見抜こう
制作会社がリニューアルを勧める背景には、彼らのビジネス上の都合があることも知っておくべきでしょう。
大きな売上が欲しい
多くの制作会社にとって、月額数万円の保守費用よりも、数百万円のリニューアル案件の方が短期的な売上として魅力的です。
そのため、既存サイトを改修して延命させるよりも、「もう寿命です」「システムが古すぎて危険です」といった言葉で不安を煽り、大型案件を受注しようとするバイアスがかかりがちです。
他人のコードは触りたくない
エンジニアやデザイナーの心理として、他社が書いたコードを解読して修正したり、他社が作ったデザインを踏襲して修正したりするのは、新規で制作するよりも遥かに大変でストレスが溜まります。
バグや表示崩れが出た時の責任も負いたくないため、「リスク回避」のために「全部作り直した方が早いです」と主張するのです。
これは彼らにとっては正論ですが、必ずしもクライアントの費用対効果にとって最善とは限りません。
3.よくある失敗の7つのパターン
失敗するリニューアルには、共通するパターンがあります。
- 目的がない
「古くなったから」「なんとなく」で始まり、何をもって成功とするかが決まっていない。 - デザイン偏重
社長の好みやトレンド重視で、ユーザー視点が置き去りにされている。 - 中身がスカスカ
箱(デザイン)だけ立派だが、原稿の準備が遅れ、公開時に内容がない。 - SEO対策の失敗
古いページの評価を引き継ぐ設定(リダイレクト)を忘れている。 - 高機能すぎる
使いこなせない高価なシステムを入れて運用が回らなくなる。 - 運用体制がない
「誰が更新するのか」が決まっておらず、公開直後から放置される。 - 意思疎通のズレ
「思っていたのと違う」まま完成してしまう。
4.「もったいないサイト」を生まないために
これらを踏まえると、現在のサイトを「全否定」して作り直すことのリスクが見えてきます。
本当に必要なのは、建物を爆破して更地にすることではなく、基礎診断を行って、耐震補強やリフォームを行うことかもしれません。
既存サイトの良い部分(資産)を見極め、悪い部分(負債)だけを取り除く。この「再生・刷新」のアプローチこそが、失敗確率を下げ、コストを抑える賢い方法なのです。
第3章 リヌーボデザイン流「Web再生」:4つのプロセス
私たちリヌーボデザインでは、安易なリニューアルを否定し、既存サイトのポテンシャルを最大限に引き出すための独自のアプローチをとっています。
それが、Re:Think(再考)、Re:Design(再設計)、Re:Build(再構築)、Re:Value(価値再創造)の4つのステップです。
他社制作の「もったいないサイト」を、いかにして「働くサイト」へと蘇らせるのか、そのプロセスをご紹介します。
1.Re:Think(再考):まずは現状を知り、戦略を練り直す
すべての始まりは「疑うこと」と「知ること」です。制作会社を変えたいという感情的な動機を、論理的な戦略へと昇華させます。
徹底的な現状分析(Webドック)
人間ドックのように、Webサイトの健康状態を数値で可視化します。
- アクセス解析
どのページが見られているか、どこでお客様が帰ってしまっているか。 - SEO診断
検索順位はどうなっているか、どんなキーワードで評価されているか。 - プロの目視診断
専門家の目で見て、使い勝手やデザインに問題はないか。 - 技術診断
ページの表示速度は遅くないか、スマホで崩れていないか、セキュリティは大丈夫か。
これにより、「サイト全体が悪い」のではなく「ここを直せば良くなる」というポイントを特定します。
ビジネスゴールとの再同期
企業のビジネスや市場環境は、サイトを作った当時から変化しているはずです。
「以前は会社案内代わりでよかったが、今は採用を強化したい」「BtoBから一般消費者向けへ販路を広げたい」といった経営課題の変化に合わせ、Webサイトに求める役割を再定義します。誰に何を伝えるべきか、ターゲット(ペルソナ)を明確にします。
2.Re:Design(再設計):見た目だけでなく「体験」を変える
デザインとは単なる装飾ではありません。「設計」です。
Re:Designフェーズでは、見た目の美しさだけでなく、ユーザーが迷わずゴールに辿り着ける「体験」を設計し直します。
使いやすさ(UI/UX)の最適化
分析に基づき、情報の優先順位を整理します。
- メニューの整理
ユーザーが探しやすい構造にする。 - ボタンの改善
「お問い合わせ」ボタンの場所、言葉、色を見直し、クリックしたくなるようにする。 - 入力フォームの改善
面倒な入力項目を減らし、途中で諦めさせない工夫をする。
ブランド・リノベーション
フルリニューアルしなくても、フォントの変更、行間の調整、写真の差し替え、配色の微調整だけで、サイトの印象は劇的に変わります。企業の今のイメージに合わせ、信頼感や先進性を表現するように微修正を加えます。
これは、古着をリメイクしてトレンドの服に変えるような作業です。
3.Re:Build(再構築):見えない裏側を綺麗にする
目に見えない裏側のシステムこそ、サイトの寿命と安全性を左右します。他社制作サイトの引き継ぎにおいて最も重要なのが、この技術的な「大掃除」です。
制作会社が作った独自テーマから「Cocoon」や「SWELL」への移行
WordPressで作られたサイトの場合、メンテナンスがされていない古いコードのままだったり、更新がしにくい問題があったり、拡張性が無かったり、一部機能が利用できなかったりする制作会社が作った「独自テーマ」を、デザインの見た目はそのままに「Cocoon」や「SWELL」といった高機能な汎用的なテーマに置き換える作業をよく行います。
独自テーマを使い続けるよりも、以下のような多くのメリットが生まれるからです。
- 表示速度が速くなる
高速化機能が標準搭載されているため、表示スピードが改善し、ユーザー体験が向上します。 - SEO的に有利になる
Googleの評価基準(Core Web Vitals等)に最適化された内部構造を持っているため、検索順位が上がりやすくなります。 - 管理が楽になる
Web担当者様が管理画面から簡単に更新できるようになります。何か分からないことがあってもGoogle検索すればすぐに解決策が見つかります。 - 常に最新
テーマのアップデートによって、常に最新のセキュリティと機能を保つことができます。 - 拡張性が自由
特定の制作会社に依存しないため、将来的な機能追加やデザイン変更も自由自在になります。
4.Re:Value(価値再創造):運用で育てていく
サイトは公開(または再生)した日が本当のスタートです。
Re:Valueでは、再生した器に魂(コンテンツ)を吹き込み、継続的な成長を支援します。
コンテンツ・マーケティングの実装
ただの商品カタログから、顧客にとって有益な情報発信メディアへと転換します。SEOを意識したブログ記事の作成、導入事例のインタビューなどを行い、未来のお客様との接点を増やします。
データに基づいた改善サイクル(PDCA)
「やりっぱなし」にはしません。毎月のデータを分析し、「どの記事が読まれているか」「どこで問い合わせを諦めたか」を検証します。このデータに基づき、次月の改善策を提案・実行し、サイトの価値を右肩上がりに高めていきます。
第4章 セカンドオピニオンの重要性:言いなりにならないために
Web制作業界におけるプロと一般の方との知識差は圧倒的です。この差を埋め、対等な立場で判断を下すために必要なのが「セカンドオピニオン」です。
1.医療と同じように、Webにもセカンドオピニオンを
医療の世界では、重大な手術を勧められた時に、主治医以外の医師に意見を求めることが一般的ですよね。これは主治医を疑っているからではなく、納得して治療を受けるためのプロセスです。
企業のWebサイトも、数百万円の投資と事業の命運を伴う重要な資産です。
「全摘出(フルリニューアル)が必要です」と言われた時、別の専門家に「温存療法(改修)はできませんか?」と聞くのは、経営判断として極めて合理的です。
2.セカンドオピニオンを受ける3つのメリット
提案の内容と価格が適正かわかる
現在の制作会社からの見積もりや提案書を、第三者の視点でチェックします。
「この機能に100万円かかると言われたが適正か?」「技術的に不可能と言われたが本当か?」といった疑問に対し、専門家が市場相場や技術的根拠に基づいて回答します。結果として、過剰な投資を防ぎ、コストを適正化できるケースが多々あります。
隠れたリスクが見つかる
制作会社が見落としている、あるいは隠しているリスクを洗い出します。
例えば、リニューアルに伴うドメインパワーの損失リスクや、特定のツールへの依存リスクなどです。利害関係のない第三者だからこそ、忖度なしに「ここが危ない」と指摘できます。
選択肢が広がる
「AかBか」という二者択一を迫られている時に、「Cという方法もありますよ」という新たな視点を提供します。現在の制作会社の得意分野以外の解決策を知ることで、意思決定の幅が広がります。
3.リヌーボデザインのセカンドオピニオン
リヌーボデザインは、制作会社であると同時に、Webの「診断医」でもあります。
私たちは、「リニューアルを受注するため」に診断をするのではありません。「お客様のビジネスにとって何が最適か」を診断します。
その結果、「今の制作会社と関係を修復した方が良い」という結論になれば、正直にそうお伝えします。あるいは、「部分的な改修だけ弊社で請け負う」「要件定義だけ手伝う」といった柔軟な関わり方も可能です。
第5章 安全な「制作会社乗り換え」完全ガイド
「もう今の会社とは無理だ、変えよう」。そう決断したとしても、実際の乗り換え(移管)作業は、地雷原を歩くような危険を伴います。
手続きを間違えると、サイトが表示されなくなったり、ドメインを奪われたりする最悪の事態になりかねません。
失敗しないための乗り換え手順を解説します。
Step 1:契約と資産の棚卸し(現状把握)
解約を申し出る前に、手元にある契約書と資産状況を徹底的に確認してください。これは「人質」がどこにあるかを確認する作業です。
乗り換え前の必須チェックリスト
- ドメイン名義
ドメインの持ち主は自社ですか?制作会社ですか?(超重要!) - サーバー契約
サーバーの契約者は誰ですか?ID/パスワードは持っていますか? - CMS権限
WordPress等の「管理者権限」を持っていますか?(制限された編集者権限ではありませんか?) - 著作権
デザインやデータの著作権はどちらにありますか? - 解約条件
解約するには何ヶ月前に言わないといけないですか?違約金はありますか?
特にドメインとサーバーの名義が制作会社になっている場合、解約と同時にサイトが消滅するリスクがあります。この場合、慎重な交渉が必要です。
Step 2:新しいパートナーの選定と技術検証
今の会社の不満を解消できるだけでなく、他社制作サイトの引き継ぎ実績が豊富な会社を選びます。
面談で聞くべきこと
- 「他社が作ったサイトの保守・改修は可能ですか?」
即答で「No(作り直し)」と言う会社は避けるべきです。「調査してみないとわかりませんが、可能です」と答える会社は誠実です。 - 「移管の手続きもサポートしてくれますか?」
技術的に最も事故が起きやすい部分です。ここを丸投げできる会社を選びましょう。
Step 3:データのバックアップと確保
解約交渉がこじれる前に、可能な限りのデータを手元に確保します。
サーバーの管理画面から取得できるバックアップデータ、WordPressのプラグインで取得できるバックアップデータなど。
これらが確保できれば、最悪の場合でも別のサーバーでサイトを復旧(再生)させることができます。
Step 4:解約通知と移管の実行
新しいパートナーの準備が整ってから、現行の制作会社に解約を通知します。
ここで重要なのは「喧嘩別れしない」ことです。感情的にならず、「社内方針の変更で」「社長の一声で」といった大人の理由を使い、スムーズな協力を引き出します。
- ドメイン移管
ドメイン管理を移すためのパスワード(AuthCode)を発行してもらいます。 - サーバー切り替え
新しいサーバーにドメインを紐付け直します。
もし引き継ぎを拒否されたら?
「ドメインは渡さない」「データは自社の著作物だ」と言われ、引き継ぎを拒否されるケースがあります。
- ドメイン
法的には登録名義人のものですが、商標権などを理由に交渉可能です。 - データ
著作権が制作会社にあっても、交渉次第で利用できることがあります。場合によっては「買い取り」の方が、ゼロから作るより安く済むこともあります。
リヌーボデザインでは、こうした困難な引き継ぎ交渉や、データの救出サポートも行っています。
第6章 良い制作会社の見極め方:「パートナー」を探すために
「もう二度と失敗したくない」。そう願う担当者様のために、本当に信頼できる制作会社を見極めるポイントをお伝えします。
6.1 見積もりと提案書の「危険信号」
提案書を見るだけで、その会社の実力と姿勢はある程度わかります。
| 項目 | 危険信号(注意!) | 安全信号(信頼できる!) |
| 見積もり | 「一式」ばかりで内訳が不明。 | 項目ごとに何をするかが明記されている。 |
| デザイン | 初回から見た目の良いデザイン案を出してくる(見せかけ重視)。 | コンセプトや設計図(ワイヤーフレーム)の説明に時間を割く。 |
| ヒアリング | 「どんなデザインが好きですか?」と主観を聞いてくる。 | 「御社のビジネス課題は?」「競合は?」と戦略を聞いてくる。 |
| リスク説明 | 「絶対に売れます」「すぐ上がります」と良いことしか言わない。 | 「最初は順位が下がる可能性があります」とリスクも説明する。 |
2.「制作会社」ではなく「事業パートナー」を選ぶ
Webサイトは作って終わりではありません。結婚相手を選ぶように、長く付き合える相手を選ばなければなりません。
- 業界知識
自社の業界について勉強してくれているか。 - 教育姿勢
担当者に知識を共有し、育てようとしてくれるか(ブラックボックスにしないか)。 - 相性
話していてストレスがないか、価値観が合うか。これは意外と重要です。
結論:その悩み、一人で抱え込まずにご相談ください
「制作会社を変えたい」
その思いは、現状への不満であると同時に、「もっと自社のWebサイトを良くしたい」「もっと会社に貢献したい」という、あなたのプロフェッショナルとしての熱意の表れです。
その熱意を、無益なトラブルや失敗するリニューアルで消耗させてしまうのは、あまりにも「もったいない」ことです。
今、あなたが抱えている「連絡が遅い」「提案がない」「何が起きているかわからない」という悩みは、あなた一人の責任ではありません。業界の構造的な問題であり、解決できる課題です。
どうか、そのサイトを諦めて「全取っ替え」する前に、一度立ち止まってください。
そのサイトは、適切な治療(Re:Build)とリハビリ(Re:Value)を行えば、また力強く走り出せるかもしれません。
あるいは、本当に作り直す必要があるとしても、次は失敗しないための正しい設計図(Re:Think)が必要です。
リヌーボデザインは、孤独なWeb担当者様の隣に立つ「セカンドオピニオン」として、あるいは「再生のパートナー」として、あなたを全力でサポートします。
まずは現状のモヤモヤを、そのまま私たちにぶつけてください。

